不思議カウント

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2016年12月18日日曜日

ゲームの世界で芸術を作り出す「Tale of Tales」について


私、ゲームは非常に好きなのですが家庭用ゲーム機をほとんどもっていないため、だいたいはパソコンでゲームを遊んでいます。

最近ではもっぱらSteamとかいうセール時に毎回サーバーがパンクするPCゲームプラットフォームを利用しています。このSteam、ほとんどが海外製のゲームが配信されているのですが、その数がすさまじく、『Grand Theft Auto(GTA)』など有名なゲームから、一人や数人で制作した小規模なインディーズタイトルまで扱っています。

そのため、様々な「変わった」ゲームが集まり、ストアを見るだけでも楽しいという存在自体がゲームのようなものがSteamです。そんなSteamでゲームを配信している中で、個人的に特に好きな制作会社があります。

それが「Tale of Tales」です。

この「Tale of Tales」というゲーム制作会社、Steamに何作かゲームをリリースしているのですが、どれもプレイヤーからの評価は賛否両論。それもそのはずで、彼らの作るゲームは、いわゆる"ゲーム的"な面白さはほとんどないのです。

例えばスーパーマリオシリーズならばボタンを押せば気持ちのいい音とともにマリオがジャンプする、そのまま敵を踏めば倒すことができる。たのしい。このようなゲーム要素が「Tale of Tales」作品にはほとんどなく、ゲームの操作性もお世辞にも良いとは言えません。

ですが、「Tale of Tales」が制作したゲームには他の制作会社ではもちろん、映画や小説、漫画などの他のメディアにもない魅力があるのです。

説明が難しいので、実際に「Tale of Tales」がリリースしたゲームを紹介したいと思います。(ここから画像多めで多少重いですのでご注意ください。)



『Bientôt l'été』

Bientôt l'été』は「Tale of Tales」が2013年2月7日にリリースしたゲームです。タイトルの時点でもう読めません。さすがです。(どうやらフランス語で「もうすぐ夏」という意味らしい。)

ゲームを起動すると、いきなり「it's nearly summer」というテキストが表示されます。

ですがいまは冬ですし、最近アホみたいに寒いですし...

と、戸惑っていると今度はプレイヤーの性別選択へ。個人的にここでの性別は実際の自分の性別を選んだ方が楽しいと思います。

その後、画面が変わりプレイヤーはいきなり目の前に海のある不思議空間に放り出されます。ここまで特に説明とかはありません。

綺麗です。

移動はマウスの左クリック、あるいはキーボードの方向キー(下以外)で行います。マウスの左クリック、あるいは方向キー下では画面表示が変わり、これまた不思議空間が目の前に広がります。まぶたを閉じたのかな、とも思いますがよくわかりません。

しばらく浜辺をうろついていると、近くに一軒の建物を発見しました。近づいてみるとどうやら中に入ることができるようです。

建物の中に入ると、他のこのゲームを遊んでいるプレイヤーを待つことになります。ですが、基本的にいくら待ってもほかのプレイヤーが入ってくることはありません。当然です。このゲームより遊んでいて面白いゲームはいくらでもあるのですから。

待ち疲れたら画面に右上にある「simulation」というところをクリックしてみましょう。すると、実際に他のプレイヤーとマッチングした際のシミュレーションを、AIとすることができます。


この建物の中では、他のプレイヤー(いたらね)と共にチェスをして遊ぶことができます。しかし、当然のようにこのチェスは通常のルールと同じではありませんし、そもそも初期段階ではチェスの駒はひとつしか持っていません。駒はチェスボードの指定された場所に自由に置くことができ、置くところによって相手に特定のメッセージを伝えることができます(I Love YouやらI See Youやら)。また、画面右にあるワイングラスや灰皿、タバコなどをクリックしても行動することができます。

このように、この建物内は他のプレイヤーとあまり噛み合わない交流をしながら遊びます。ですが、前述したとおりこのゲームを同時刻に遊んでいるプレイヤーはまずいないので、基本的にマッチングはしないものと考えてください。

私はかつて、どうにか他のプレイヤーとマッチングしてみたいと思い、建物内で何もせずにずっとパソコン画面を見つめていたことがあります。その間、もしマッチングしたらこのようなコミュニケーションをしよう、このようなメッセージを伝えようと考えていました。

そして待ち続けて2時間後に私は悟りました。
おお、これは現実の恋と同じではないか!
と。

そう。私が学生時代に体験した、まだ恋愛に慣れていないころの甘酸っぱい思い出、異性との待ち合わせ、相手への思い、そのような感情のひとかけらをこのゲームをプレイして思い出すことができたのです。

この『Bientôt l'été』は私の解釈では恋をイメージした作品となりました。

『Bientôt l'été』は他にも、フィールドを探索して不可思議なオブジェクトをみつけたり、チェスの駒を集めたりなどの要素もありますが私はほとんど手を付けていません。おそらく誰も来ないであろう相手を待ち続けることこそ、このゲームの本質だと私は考えたからです。

『Bientôt l'été』はキャラクターの移動速度も亀以下なんじゃないかと思うくらい遅いですし、人によっては本当にどうしようもないゲームだと思います。ですが、私は他のゲームでは絶対に体験できないことを体験できたかけがえのないゲームのひとつです。


このように、「Tale of Tales」は他のゲーム制作会社にはない、独特の体験を与えてくれます。この会社では他にも赤ずきんちゃんをモチーフにしたちょっぴりホラーな作品『The Path』や、オスカー・ワイルド原作の戯曲、サロメを原作とした『Fatale』など、さまざまな作品をリリースしています。ご興味がある方はチェックしてみてください。

さて、このように芸術性の高いゲーム作品をリリースし続けてきた「Tale of Tales」ですが、最近になりゲーム制作活動を停止すると発表しました。

ベルギーのインディーデベロッパー「Tale of Tales」は、最新作『Sunset』が商業的に失敗したことを公式ブログにて明らかにした。『Sunset』の売り上げがわずか4000本程度であったことを報告しており、今後ゲーム開発からは遠のく姿勢を見せている。少なくとも商業向けゲームは手がけないという。
AUTOMATON 「“もう作ろうと思わない”アート系インディーゲームの雄「Tale of Tales」が最新作で商業的失敗」より
この記事によると、リリースした作品の売り上げが芳しくなく撤退せざるを得なかったとのことです。 やはり芸術ではパンは買えないとのことなのでしょうか。大ファンだった私からすると非常に悲しいです。

「Tale of Tales」公式ブログ

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